メリット・デメリット~不妊治療の保険適用~
2022-04-22 不妊治療
不妊治療の保険適用についてのメリット・デメリット
不妊治療をしている方の約6割の方が金銭面が原因で子供を諦めているとききます。
1000万ベイビーという言葉ができるぐらいに不妊治療の治療費は莫大にかかることもあります。そこまでいかなかったとしても、300万円以上かかるという現状があります。
保険適用の拡充へ
保険適用外だった体外受精だった場合、1回の平均およそ50万円と高額です。これは基本的に全額自己負担だったためで、今回の保険適用で医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担額は原則3割になりました。
いままで保険適応になっていた不妊治療は、
・子宮や精管の異常といった原因
となる症状や治療が中心でした。
ですが今回の保険適用範囲が広がったことにより、
・原因が不明な場合の治療(タイミング法・人工授精・体外受精・顕微受精)
が保険適応になりました。
体外受精で保険適応の3割自己負担の場合
採卵 9600~31200円(卵子の数による)
体外受精 12600円
培養 13500~40500円(培養する受精卵の数による)
胚移植 22500円
卵子の個数や培養の数でも値段は変わってきます。
また病院によって値段も変わってきますが、保険適用の治療であれば、
「高額療養費制度」も利用することができます。
保険適用を受けられる対象や条件がいくつかあります。
厚生労働省のリーフレット参照。https://www.mhlw.go.jp/content/000913267.pdf
では保険適用外の不妊治療
3割自己負担+7割保険
となりますが保険適用外の治療技術は全額自己負担となります。
注意するところとしては
体外受精など保険適用の技術と組み合わせると「混合治療」となり、
保険適用になった部分も全額自己負担になってしまいます。
ただし例外として、「先進医療」と認められているものを施設基準をみたす医療機関が「先進医療」の届け出をすれば、保険適用の体外受精などと組み合わせられます。
なので先進医療の費用は全額自己負担ですが、保険適用の治療技術は3割負担になります。
先進医療とされるもの
- PICSI
- タイムラプス
- 子宮内細菌叢検査 (EMMA/ALICE)
- SEET法
- 子宮内膜受容能検査 (ERA)
- 子宮内膜スクラッチ
- IMSI
今後先進医療とされていくか考えられているもの
- 子宮内細菌叢検査 (子宮内フローラ)
- PGT
- 反復着床不全に対する投薬(タクロリムス)
- 二段階胚移植法
例えば保険適用外のものとして「着床前遺伝学的検査(PGT-A)」がありますが、倫理的な面から検査に反対する声も多いため、医療の有効性や安全性などを示さなければいけばい「先進医療」として審議されています。
そのため保険適用外とされ、保険適用のものと合わせた場合、保険適用の部分も全額自己負担となってしまいます。
保険適用のメリット・デメリット
これらのことから
メリット
- 治療を安く受けられる
- 不妊治療始めるをための後押しとなる
- 体外受精や顕微受精に進みやすい
- 多くの人が治療を受けられる
上記にもあるように、治療を安く受けられることから、今まで不妊治療になかなか踏み出せなかった人や金銭面で体外受精に進めなかった人も治療に入りやすく、多くの人が治療に臨むことができることです。
患者さんの心理的なハードルがかなり低くなったと感じられます。
なのでこれから高度生殖補助医療に進もうと考えている方にとっては、まずは試しにやってみようと保険適用の範囲で初めていくことがいいかもしれません。
ですが保険適用が始まってから、若い20代の方でもタイミング療法からステップアップを飛ばして、体外受精に進まれる方が増えてきているそうです。保険適用になり手を出しやすくなっている体外受精ですが、一般不妊治療と違い、身体に負担がかかることから考えて体外受精に進まれることをお勧めします。
体外受精なら絶対に子供ができるとは限りません。まだまだ妊娠率も低いので、自分にあった治療法を選ぶことが大事かと思います。
デメリット
もちろんよいことだけではなく、
- 治療の質が下がる
- 治療の自由度がさがる
- 余剰胚が全部なくなるまで保険適応の採卵に進めない
- 最先端の医療がうけれない
上記にもあるように
「治療の質が下がってしまうのではないか」とも言われています。
まとめ
いままで日本の不妊治療では、
国内未承認の海外の最先端の治療技術や薬を導入する自由診療を中心に発展していました。
なのでそれぞれの夫婦にあった治療ができ、新しい医療機器や技術が早く導入できることが今までのメリットとしてありましたが、保険適用の一律な治療のみになっていくと医療の質が保たれなくなるのではともいわれています。
保険適用の拡大によってできない治療が増えることや自由度の低さが、妊娠を遠ざけることにもつながると思います。
例えば
薬もこの患者さんの身体にはこの薬があっているのに、使えないことから、
使うかもしくは
薬を使うためにすべての治療を自由診療にするか
の2択を迫られることになります。
また凍結した余剰胚があると、それをすべて融解胚移植しないと次回の採卵に臨めません。なので自由診療では受精卵を戻すか戻さないかを選べるのもメリットでしたが、保険診療だとそれができなくなります。
今まで最先端の医療を行ってきた方が保険適用の治療に変更するとなると、治療の質が下がってしまうので、より妊娠から遠のいてしまいます。
そのため、病院によっては、そのまま自由診療で治療の技術を下げないとして、保険適用をしない所もあります。
いかがでしたか?
これから体外受精や顕微受精に進む方や治療している方は自分に合った治療法が保険診療でできるのかを考えて選ぶ必要があります。
メリット・デメリットを参考にしてみてくださいね。